シン・エヴァンゲリオン劇場版:||を見て

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序で生まれ変わったヱヴァを見せてくれ、破でエンタメに振り切ったヱヴァを堪能させてくれ、Qで「やっぱりこれはエヴァンゲリオンなんだ」と観客を置いてけぼりにし、どん底に突き落としてくれた新劇場版シリーズ。

Qでかなりの置いてけぼりにされ考察が必要になったことと、新劇場版が全く新しい作品として生まれ変わったとしても一番中心にある骨組みは旧劇と変わらない点を考えても、このあとシンエヴァで待ち受けるのは人類補完計画とファンをもぶった切る過激なまでの内面描写ということで、「一体何を見せられているんだろう」というようなことにならないか一抹の不安を持って遂に鑑賞した今作やったけど・・・・杞憂やった。

新しい用語てんこ盛り。

描写もようわからんとこいっぱいあった。

でもしっかり終わってた。

全ての原理と辻褄を理解したわけじゃないけど、ちゃんと終わってた。

なんなら全てのファン達の万感の思いを拾い上げるように地に足着けて終わってた。

エヴァシリーズで初めて描かれたと言っても過言ではない活き活きした村人とおばちゃん達。

その村人たちのおかげで空っぽだった心に人間性を積み重ねていく綾波レイ。

廃人になったシンジを理由を聞くこともなく優しく迎え入れてくれたトウジとケンスケ。

シンジに社会の厳しさと大人の責任、自分の贖罪を示してくれてまさに育ての親とも言えるようなミサトさん。

誰よりも早く大人にならないといけなかった生い立ちを背負いながら他人を受け入れる強さを持ってくれたアスカ。

自分がしていたことはただのエゴだったと気付いたにも関わらずそれでもシンジの幸せを願ってくれたカオルくん。

純粋すぎる愛故に世界を天秤にかけたけど、内情を吐露してくれてシンジの中に妻のユイの姿を見つけることができたゲンドウ。

誰よりもゲンドウとシンジのことを想い、文字通り身を挺してこの新劇場版を支えてくれたマリ。

他人に拒否され、世界にも拒否され、自分にも絶望してしまい廃人にまでなったのに、もう一度現実と向き合い、前に進む勇気を持ってくれたシンジくん。

そしてこの全てを描いてくれた庵野秀明総監督と製作陣の皆さん。

本当にありがとう。

見る前は、エヴァが終わったら何を楽しみに生きていこうとか、終わるくらいならずっと延期してくれてもいいとかも思ってたけど、見終わった今はエヴァの完結作をこのような素晴らしい形で終わらせてくれたこと、それを劇場で見れたことに対する感謝しかない。

他にも、初めてエヴァを見たときはシンジ達よりも年下の小学生やったのに今ではミサトさんや加持さんよりも年上になってしまった時間の早さ。そして同じ熱量でこの気持ちを共有できる友人がいることと、この完結編を楽しみにしていたのに見られなかった友人がいたこと等、いろんな気持ちが混じり合うけど、それでもやっぱり感謝しかない。

しばらくは他人の評価も考察も見たくない。自分の中でしっかりと完結したこの作品の余韻に浸っていたい。

神と人、自分と他人、父と息子、愛と憎悪、獲得と喪失、そして繰り返しの物語。

傑作でした。

p.s

どなたかは存じ上げませんが、エンドロールで繰り返し割と監督などの名前の近くに名前が記載されていた「録音  住谷真」さん。遠い親戚なのか赤の他人かはわかりませんが、エンドロールでさえどこか運命的なところを感じさせてくれてありがとうございました(笑)